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ブラジル日本人作家  松井太郎小説選・続
遠い声
松井太郎 著/西成彦・細川周平 編
2012年7月20日
定価:1900円+税
四六判・並製・334ページ
ISBN:978-4-87984-309-8
在庫ございます

内容紹介

……「遠さ」を生きる人は、失われたものをなつかしむだけでなく、たえず新しい風景に目をひらいてもいる。父と子はぶつかりあいながら成長し、アルマジロと虫たちが人間のいとなみにとけていく。ふとした拍子にちえの輪がはずれ、街の無名のざわつきのなかから、ききおぼえの ある「遠く、あたらしい声」がころがりだす。  (いしいしんじ)


  日本からブラジルに渡り、70余年。手強い大地・気候と格闘してきた老移民が、遠く離れた故国の言語で物語を紡ぐ。
  前作『うつろ舟』で話題を集めた著者による作品集第二弾。日本人移民社会草創期に起きた駆け落ち事件の真相を探る表題作など、10超の短編を収録。解説・いしいしんじ。


目次
ある移民の生涯  /  遠い声  /  うらみ鳥  /  アガペイの牧夫  /  土俗記  /
金甌  /  山賤記  /  位牌さわぎ  /  野盗一代  /  虫づくし  /
タツー物語  /  コロニア今昔物語  /  ジュアゼイロの聖者  /  野盗懺悔  /  ちえの輪



著者・編者紹介

松井太郎(まつい・たろう)
  父貞蔵、母きよを両親として、1917年神戸市に生まれる。日本の国籍は今も保持。
  1936年、父の失業を機に、一家でブラジルに渡った。サンパウロ州奥地で農業に従事。一家は4年後には25ヘクタールの小地主となった。
  第二次世界大戦、またその後のコロニア社会の動揺を大過なく切り抜ける。
  意見が合わなくなった父に勘当され、妻・子どもを連れて新しい生活を始める。過労がたたって病を得たが、気候のよいモジ・ダス・クルーゼス市の郊外に移り、病気から回復。妻と息子の働きによって、安定した生活ができるようになった。後日、息子がサンパウロ市に移り、スーパーマーケットを出したのを機に隠居。
  生来、文芸に親しんできたが、隠居後に創作活動を開始。年一作ぐらいの割で創作し、コロニアの新聞・同人誌に投稿を重ねてきた。
  現在もサンパウロ市に在住、なお創作活動を続けている。
  2010年に松籟社より『うつろ舟  ブラジル日本人作家松井太郎小説選』(西成彦・細川周平編)を上梓した。

西  成彦(にし・まさひこ)
  1955年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。専攻は比較文学、ポーランド文学。
  著書に、『ラフカディオ・ハーンの耳』(岩波書店、1993)、『イディッシュ  移動文学論T』(作品社、1995)、『森のゲリラ  宮沢賢治』(岩波書店、1997)、『耳の悦楽  ラフカディオ・ハーンと女たち』(紀伊国屋書店、2004、芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞)、『エクストラテリトリアル  移動文学論U』(作品社、2008)、『ターミナルライフ  終末期の風景』(作品社、2011)など。
  訳書に、ゴンブローヴィッチ『トランス=アトランティック』(国書刊行会、2004)、コシンスキ『ペインティッド・バード』(松籟社、2011)など。

細川  周平(ほそかわ・しゅうへい)
  1955年生まれ。国際日本文化研究センター教授。専攻は近代日本音楽史、日系ブラジル移民文化論。
  著書に、『サンバの国に演歌は流れる  音楽にみる日系ブラジル移民史』(中央公論社、1995)、『シネマ屋、ブラジルを行く  日系移民の郷愁とアイデンティティ』(新潮社、1999)、『遠きにありてつくるもの  日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』(みすず書房、2008、読売文学賞受賞)、『民謡からみた世界音楽  うたの地脈を探る』(編著、ミネルヴァ書房、2012)、『日本語の長い旅  日系ブラジル文学史』(みすず書房、近刊)など。


※著者・編者紹介は、本書刊行時(2012年7月)のものです。


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書評掲載

・「読売新聞」(2012/9/30)、評者:湯本香樹実さん
「……バリエーション豊かな短篇(たんぺん)に通底するのは、恬淡(てんたん)としたユーモアと生きとし生けるものを愛(いと)おしむ情に裏打ちされた、良質な通俗性。……」



関連書

『うつろ舟』