ラテンアメリカ文学研究者の安藤哲行さんは、かつて『ユリイカ』誌の「ワールド・カルチュア・マップ」という欄で、ラテンアメリカ文学の現状を(ときどき、スペイン文学のほうも)定期的に報告されていました。1990年代初頭から今世紀初めにかけての時期で、ガルシア=マルケスやバルガス=リョサ、フエンテスといったいわゆる〈ブーム〉の作家の新作が話題を呼ぶ一方で、新しい作家たちも続々、その存在感を示しはじめたころ。安藤さんにはその内容の多くを、小社の『現代ラテンアメリカ文学併走〜ブームからポスト・ボラーニョまで〜』という書籍にまとめていただいております。
今回ふたたび、現在のラテンアメリカ文学の現場報告を安藤さんにお願いいたしました。中南米で評判になっている作品や、安藤さんが注目している作家について、お書きいただきます。連載タイトルは書籍と同じく「現代ラテンアメリカ文学併走」としました(紛らわしくて、すみません……)。『ユリイカ』誌の刊行頻度にならって、月1回の更新を予定しています。
ときどき、書籍版『現代ラテンアメリカ文学併走』収録のテキストをお蔵出しする予定(というか第1回からしてそうなのですが、プレ公開版として、さきごろ日本語版が安藤さん訳で刊行されたホルヘ・ボルピ『クリングゾールをさがして』を取り上げた回を掲載しています)。
【目次】
2015/5/28 スペイン語で書かれたドイツ小説:ホルヘ・ボルピ『クリングゾールを探して』
2015/7/11 詩を選ぶ:レイナルド・アレナス『自作の墓碑銘』
2015/10/5 贋札を手にしたら:セサル・アイラ『バラモ』
2015/11/15 風刺の刺の向かうところ:フアン・ガブリエル・バスケス『評判』
2015/12/30 書店での本との出会い:ロドリーゴ・アスブン『愛情』
2016/2/15 書店での本との出会い2:アレハンドロ・サンブラ『家への帰り方』
2016/4/6 書店での本との出会い3:ホルヘ・ボルピ『選ばれた女たち』
2016/10/9 小説とシナリオ:マヌエル・プイグ『天使の恥部』
2016/12/30 ジャンルを超えて:マリアーナ・エンリケス『火の中で失くしたもの』
2017/3/25 記憶を呼び覚ますもの:アルベルト・フゲッ『わが人生の映画』
2018/8/17 本はそれぞれ、自分の読者を選ぶ:フアン・ビジョーロ『野生の本』
2018/4/26-11/8 『ボマルツォ』への旅
2019/2/12 母子をつなぐ糸:サマンタ・シュウェブリン『救える距離』
2020/4/17-6/21 ルイス・セプルベダの死、そして最後の作品『白いクジラのお話』
2020/12/10 圧倒的な筆力:フェルナンダ・メルチョール『ハリケーン・シーズン』
2022/5/31 月の捕らえ方:バルガス=リョサ『フォンチートと月』
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